自己流考

自己流って何だろう
その人独自の方法だ
　ある一方向から見た場合のみ都合が良いことだろう

それが、全ての方向から見ても合理的で、なおかつ自在であれば
すでに自己流とは言われない

18歳の時に「箸」の持ち方を直した
大学生になり他人と「箸」で食事をする機会が増えたからだ
多少なりとも大人の自覚が出来たのか
作法とまでは行かなくとも見苦しくない仕方を身につけたかった
しかし、長いこと狎れ親しんだ方法を変えるのには辛抱が要った
一時的にできることも出来なくなる
人並みに豆をつまむことが出来た時は嬉しかった

自己流を直すためには
その方法によるウイークポイントを知ることだ
そして改善されたイメージを持ちそれを心から望むのだ
上手くいかないことの原因の多くは
「能力が足りないのではなく、方法が違うのだ」
より良い方法を思いつかないのは
残念ながら持って生まれた能力かもしれないけれど
そのために指導者を使えば良いじゃないか

うまくなる？

「なかなかウマくならないので頭部管を買ってみました」
Sさんは言う
ウマい？上手い？巧い？旨い？美味い？

すかさずおばちゃんの突っ込みにあう
「ウマいって何？」
Sさんは何も答えられない
そんな難しいことではなく
浅いレベルでのウマいのイメージを訊きたかっただけなのに

鮮やかに指を動かすことがウマいのか
美しい音を出すことがウマいのか
表情豊かに旋律を歌い上げることがウマいのか
ダイナミクスのバリエーションを持っていることがウマいのか
初見でなんでもばりばり吹けることがウマいのか

うまくなるということは現在の自分が向上することだ
それは、多分上述したどの分野においても
改善したり向上したりすればウマくなったと言える
では、何故ウマくなれないのか

自分の現状を正しく把握できないからではないか？

居場所がにゃい

今日は晴れたのに気温が上がらない

そんな日はなかなか自分の時間を作るのが難しいのだ

猫にとって「寒い」は「淋しい」と同義語だ
「好き」は「暖めろ」を意味する

案の定奴がやって来た
そしてつぶらな瞳を潤ませて言うのだ
「淋しいの。・・・・・好き・・・・」
これを言われて抱き上げずにいられる飼い主がいるだろうか
結果はこれだ



猫には妥協していただきこのままロングトーンをすることにした
奴の希望に添ってピアニシモで（それはそれで良い訓練になる）
しかし、膝の上にはたった30秒しか保たない
呼吸するたびに奴にとっての「床」が動くのだ
「もぞもぞ動かないでよ」
と言い捨てて降りてしまった。
次はここだ



この足下のフリースの中
「いやあん、うるさいぃ」

フリースで防音してもやっぱりフルートの音はお気に召さない
次は距離を置いてみた



結局スリープにしておいたPCを立ち上げてしまい
びっくりして飛び退く
そして、今また膝の上

息を吸う

どうやって息を吸ったらいいんだろう
息は日常誰でも吸えるけれど
フルート吹きならば、一度は悩んだことがあるだろう
「息が吸えない」って

「衣類圧縮袋」という物があることを知り
収納スペースが増える、と思い購入した
掃除機で中の空気を吸い込み真空にして嵩を減らすのだ
ところが、素早く作業をしないと隙を見つけて空気は中に入りこみ
全然圧縮されない
真空は難しいのだ
また、反対にひとたび真空になってしまい
出入り口が完全に閉ざされてしまうと
蓋が開かなくなる
お吸い物の蓋が開かなかったり
スーパーの袋を広げるのに苦労した経験があるだろう

複数のスペースがあり、そのスペースが閉じていなければ
空気はそこに入り込むのだ
しかし、等しく空気が入ってしまうと
その空気は自分では動かない

息を吸うということは外気を体内に取り込むのだ
外から内に空気を移動させるのだ
広いスペースが開いていればたくさんの空気が移動する

体内の空気圧が外気よりも高くなれば
空気は外へ移動する
しかし、内と外の空気圧が等しくなれば空気は動かなくなる

笛吹きは見えない空気を操るのだ
しかし、見えない空気も音になって顕れる

下駄の効用

発表会の写真ができた
みなさん、素敵に撮れている
Aさんありがとうございます
でもAさん、そろそろあなたもあちら側に立って笛を吹かなくちゃ
写真撮ってる場合じゃない

それでも、下を向いてしまった人が数人
その全てが一本歯の下駄を持っていない人だった
それを思うと、下駄には何かしらの効果はあったのだろう

今日のアンケートは
「楽譜を見ないで５分以上続けてフルートを吹いたことがあるか？」
訊いてみると案の定、未体験の人が多いのだ

楽器を構えた視線の先に楽譜があるのではなく
楽譜を見るための立ち方（座り方）になってしまう
楽譜を見ないでフルートを吹いたことが無ければ
本来の形は想像もつかないだろう

未経験の人は早速試してみることだ
しかし、そうすると多くの人は何を吹いたら良いかがわからないのだ
曲である必要は無い、しかし５分以上は続けること

「見ること」の負担に気づけばきっと一歩前進する